北回帰線、ビール、となかい

音楽とビール、たまに夢うつつ

Kurt Vile - Wakin on a Pretty Day

車窓を流れていく風景を見ている。乾いた荒野がいつまでも途切れることがない。間延びした昼が午後の時間を歪める。鉄塔の影が追いかけてきて、風向きが変わって遠くの岩肌がかすみ出す。

 

煙草の煙が太陽の光の中に溶けていく。溜息をついても、口から出てそこにとどまり続けるようだ。僕は溜息に話しかける。「やあ、元気かい?」

溜息は照れながら答える「いや、特にどうということはないよ。おたくこそ元気なのかい?」

僕はもう一つの溜息をついてから答える「いや、まあまあだよ」

「そうかい」

「まあね」

「・・・」

 

特に溜息と会話したい気分でもない。

車窓の風景は流れる。荒野が終わって海が視界に広がる。

ツバメが飛んでいる。彼の影をじっと追いかける。午後の時間はまだ終わらない。

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Mac Demarco - Blue boy

マック・デマルコは不思議なミュージシャンだ。YoutubeでいくつかPVを見ていると、どれもが人を喰ったようなバカバカしさを前面に出していて、音の方もどこかネジがゆるんだ(しかも天然ではなくてわざわざそれをやっているような)批評性というか、世の中に舌を出して煙に巻いて面白がっているような。

いや、本当にそうなのか(つまり本当にネジがゆるんでしまっているのか)もしれない危険なムードもあって、つまりはよくわからない。

しかし、この曲が入ったアルバムはすごく音の感じが透明で繊細で、なによりメロディーが洗練されている。それなのに湯上がり気分でするすると何度も聞けてしまう心地よさ。いろいろバカやってたけど、つきつめたら自然発生的にこういうすごいアルバムが出来てしまいましたということなのか。それとも実はすごい努力と試行錯誤の上に出来たのか。やっぱりよくわからない。

 

まあ、あれこれ考えるのはやめにしてコーヒーとドーナツでもほうばりながら彼のメロディーに乗っかって、夢の続きに落ちていこう。

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Andres Beeuwsaert - Encuentro

なかなかに疲れている。体が重く、やっとの思いでシャワーを浴びてようやくひと息ついた。まぶたも重い、打楽器の音も今夜はあまり耳に入ってこないだろうな、と思ったところにこのアルバムをふと思い出してなんとはなしに1曲を聴いてみる。

 

乾いた大陸の向こう側で夕暮れとともに雲が静かに流れていくのをじっと見つめるような音。自分の日常はこんなに早く時が流れているというのに、この曲の中ではそんな時間はすっかりどこかに隠れて逃げていってしまったようだ。しんとした時間が夜を浸していく。このまま気持ちよくベッドに入れそうだ。

 

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Grateful Dead - Brown Eyed Women

引き続きGrateful Deadである。

特にこれといって聞きたい音楽がないときにするりと聞いてしまう。

とくにこのライヴ盤(Europe '72) は昔からのお気に入りで、CD2枚組にずっしりと曲が詰まっているにもかかわらず、かれこれ10年以上は飽きずに延々と聴いているのではあるまいか。

そのなかでもこの曲はなんだかメロディーがポップで可愛らしくて、それなのに埃っぽくてノスタルジックで、ついつい哀しげな気分になってしまう。そして歌詞の意味は全然知らないでいる。でも、それでいいのだ。わからないこそ、何回でも聞けるということか。

 

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Grateful Dead - China Cat Sunflower / I Know You Rider

ジェリーのギターの小鳥のさえずりのようなヘナヘナした音が心の底から脱力させる。空気の澄んだ日曜日の朝に聞くにはうってつけ。

ちゅんちゅん、と鳴いていたかと思えば4分ぐらいのところから急に高度が上がり、背中が軽く持ってかれる。するするとトンネルを抜けたかと思えば、I know you riderに移行して、いろんなことがゆるんだふわふわした感じはなんともいえないこの世の桃源郷。

 

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Bob Marley - Stir it up

よく晴れた日曜日の朝、目覚める。カーテンを開ける。柔らかい太陽の日差しがまぶたに差し込む。窓をがらがらと開けると、思ったよりひんやりとした風が頬をなでる。

今日は日曜日で、何も予定がない。何をしても、どこに行くのも自由。

コーヒーをいれてもいいし、いれなくてもよい。

もう一度寝てもいいし、寝なくてもいい。

猫とベランダに出てひなたぼっこするのもいいし、煙草を吸うのもいい。

そうだ、ビールを飲もう。きりりと冷えたビールを冷蔵庫から出して、勢い良く泡を立ててグラスに注げば、完全な日曜日の幕開け。

朝の太陽と、一日の猶予。今日の24時間が僕の見方につけば、あとはなんとでもなる。

 

Bob marley、Stir it up。彼の一番日曜日っぽい曲。だらだらと何度も聞いてしまう。平和な日曜日に幸あれ。

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